レジオネラ属菌による感染症

レジオネラ属菌という細菌をご存知でしょうか。ここ数年新聞やニュースで報道されることが増えてますので、名前を聞いたことがある方も多いと思います。
今回の豆知識では、このレジオネラ属菌についてお知らせいたします。

1.どんな病気になるの?

1976年にアメリカのフィラデルフィアのホテルで在郷軍人会総会が開かれ、その参加者などの間で原因不明の肺炎が集団発生しました。原因は細菌による感染症でしたが、在郷軍人会のレジオンをとり「レジオネラ症」という病名がつけられました。
レジオネラ症は、レジオネラ属菌が原因でおこる感染症で、乳幼児や高齢者、病人などの抵抗力が低下している人がかかりやすい傾向にあり、人から人への感染はありません。
また、この病気はレジオネラ肺炎とポンティアック熱に分けられます。
レジオネラ肺炎は、高熱・悪寒・筋肉痛・吐き気・意識障害等を主症状とする肺炎で、通常の肺炎の治療薬が効かず、死亡例もあります。
一方、ポンティアック熱は、非肺炎型熱性疾患で、悪寒・筋肉痛・発熱などが見られ、一般に軽症で数日で治癒します。

2.どんな菌なの?

培地上でコロニーを形成したレジオネラ属菌

レジオネラ属菌は、土壌や河川・湖沼などの自然界に広く生息しています。
菌の増殖に必要な温度は25〜43℃、菌の形態は、長さ2〜20ミクロン(1ミクロンは1/1000mm)、幅0.3〜0.9ミクロン程度の細長い菌です。
肉眼では見えません。

3.感染経路は?

土壌や淡水に生息しているレジオネラ属菌が土ほこりとともに浴槽水(特に露天風呂、ジャグジーの空気取入口)やビルの屋上などにある空調用の冷却塔水に入り増殖した菌が、エアロゾル(目に見えないような細かい水滴)とともに飛散し、人の呼吸器系に侵入してレジオネラ症を起こすといわれています。レジオネラ属菌がいる水を飲んでも感染しないと言われていますが、絶対とはいえません。
また、一般的には抵抗力が弱っている人が発症するケースが多いのですが、これも絶対とは言えないようです。
浴槽水の場合、人の体にほこりとともに付着したレジオネラ属菌が入浴することにより浴槽水内に入るケースもあります。

4.法規制はあるの?

岩手県の公衆浴場法施行条例と旅館業法施行条例により年1回以上(連日使用型循環浴槽は年2回以上)の浴槽水水質検査義務と水質基準値(浴槽水100ミリリットル中10CFU(個)未満)が定められてます。基準を超える菌が確認された場合は、知事へ報告の義務もあります。
連日使用型循環浴槽とは、同じ水を1週間程度 ろ過・加熱・消毒をしながら使用しつづけるもので、源泉等の使用量を低減できるため多くの公衆浴場や旅館で用いられている方法です。同じ水を使用しつづけるため、消毒が不十分だとレジオネラ属菌が繁殖しやすくなります。

5.一般家庭の場合の注意点は?

家庭の浴槽で上水道を使用していれば、ほぼ心配ありません。これは、上水道には消毒用の塩素が添加されているからです。ただし、同じ水を使用しつづけると、消毒用の塩素はなくなってしまいますので24時間風呂等は注意が必要です。
加湿器の水が原因で感染したケースもありますので、加湿器の水の取り替えや清掃が必要です。